最新事故事例・兵庫・姫路の運送会社で発生したフォークリフト死亡事故
- プラスト広報部
- 7月24日
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■ 概要
2025年7月5日午前9時ごろ、兵庫県姫路市町坪の運送会社営業所にて、アルバイトとして勤務していた61歳の男性が、フォークリフトのフォーク先端が足に刺さり、死亡するという痛ましい事故が発生しました。作業中の突発的なトラブルに対して適切な措置が取られなかったことが、大きな事故に繋がったと見られています。現在、兵庫県警姫路署が業務上過失致死の疑いで事故の経緯を詳しく調査しています。
出典:神戸新聞NEXT『姫路で作業中の61歳男性死亡 フォークリフトの先端刺さる』(2025年7月5日) https://www.kobe-np.co.jp/news/jiken/202507/0019190977.shtml
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■ 事故の経緯
事故が発生したのは、営業所構内での積み荷作業中でした。被害者の男性は、フォークリフトでトラックに荷物を積み込んでいる最中に、誤って車両が脱輪し動けなくなるというトラブルに見舞われました。これを見た52歳の現場所長は、別のフォークリフトを操作して、脱輪した車両をけん引しようと試みました。
ところが、そのけん引作業中、けん引する側のフォークリフトのフォーク先端部分が被害者男性の左足を貫通する形で突き刺さり、致命的な負傷を負わせてしまいました。男性はすぐに病院へ搬送されたものの、搬送先で死亡が確認されました。
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■ 問題点の分析
この事故から浮き彫りとなったのは、現場の安全意識と対応手順の不備です。まず、脱輪というトラブルは現場では想定しうる事象であり、けん引対応もまた日常的に起こり得る作業です。しかし、けん引方法についての明確な手順や安全ガイドラインが共有されていなかったことが推測されます。
本来であれば、脱輪時の安全対策として、ジャッキや牽引ワイヤー、第三者の補助などを用いることで、人身事故を防ぐことができます。今回は、2台のフォークリフトを直接近接させるという非常に危険な方法が取られたことで、重大事故を引き起こす結果となりました。
また、被害者が現場に立ち入った状態でけん引作業が行われたことも、安全確認が徹底されていなかった証左です。作業範囲の明確化や、立ち入り禁止区域の設定が行われていれば、防げた可能性が高いといえます。
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■ 法的観点と今後の動き
兵庫県警は、この事故を「業務上過失致死」の疑いとして捜査を開始しています。業務上過失致死とは、業務に関連する過失によって人を死亡させた場合に適用されるもので、過去の類似事例では事業者や管理責任者に対する厳しい判断が下される傾向があります。
今後は、現場所長や運送会社に対して、事故時の安全管理体制、作業手順の明文化、労働者への安全教育などの実施状況が厳しく問われることになるでしょう。また、労働基準監督署による立ち入り調査も行われる可能性が高く、改善命令や是正指導が出されることも予想されます。
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■ 事故防止へ
フォークリフトの操作は、高いリスクを伴うため、操縦資格保持者への継続的な講習や、事故を想定したケーススタディの実施が求められます。
加えて、現場では「ヒヤリハット」の共有を推奨し、日常的に危険予知トレーニング(KYT)を行うことが、作業員一人ひとりのリスク感受性を高める上で効果的です。さらに、物理的な安全措置として、フォークリフトへの緊急停止装置や、接近警報システムなどの導入も進めるべきです。
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■ 終わりに
今回の姫路での事故は、日常的な作業に潜む危険性と、その対応の重要性を私たちに強く示しています。フォークリフトは便利である一方、扱い方を誤ると重大な事故に直結する作業機械です。企業における安全対策は「やっているつもり」では不十分であり、形式的な対応から「現場で機能する」対策へとシフトすることが強く求められています。
今後も類似の事故を防ぐために、業界全体での安全意識の再確認と、制度的な安全強化が必要とされるでしょう。